正法眼蔵『菩提薩埵四摂法』第1回・布施「貪らず、へつらわない心」

道元禅師の『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法の巻を、ひと区切りずつ読み進めていきます。菩薩が人々と関わり、仏道へと摂め導いていくための四つの実践、布施・愛語・利行・同事のうち、今回からまず「布施」をたずねます。

引用部分は原文とその現代語訳、その他は解説です。

原文

その布施といふは、不貪なり。不貪といふは、よのなかにいふ、へつらはざるなり。

現代語訳

布施についてまず心得るべきことは、不貪、つまり貪らないことです。貪らないということを、道元禅師は「へつらわないこと」とも言います。へつらうとは、自分の利益や見返りを得ようとして、相手の機嫌を取り、自分を曲げることです。布施とは、そうした見返りを求める心から離れて、差し出していくことなのです。

私たちは、ついつい二つのモードを行き来してしまいます。貪るときと、貪らずにただ与えようとするときです。貪るとは、自分にとって好ましいものを手放したくない、もっと自分の側に取り込みたいと執着すること。へつらうとは、相手に気に入られようと自分を偽ったり、相手を必要以上に持ち上げることです。その反対に、ただ与えようとする態度のことを、貪らない、へつらわないと言ってもよいのだと思います。そう考えると、貪らない、へつらわないというのは、仏の心が現れた様子だと捉えることもできそうです。

次回は「広い世界を治める力があっても」をたずねます。

合掌